新型コロナウイルスで普及する消毒・除菌商品での景品表示法違反事例

本記事では、製造業界の企業様へ向けて、景品表示法に関する事例をご紹介します。商品の広告を打つ際には、景品表示法をはじめとする様々な法律が関わってきます。景品表示法に違反した場合、消費者庁が事業者を公表して指導を行うこともあるため、景品表示法について理解を深めることは大切です。

今回は、新型コロナウイルス感染症で急速に普及が進む消毒・除菌商品の景品表示法違反事例を具体的に取り上げた上で、消毒・除菌商品と健康食品に関する広告表示についても見ていきます。

    目次

  1. アルコールの配合割合が表示内容を大幅に下回る
  2. 新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品への等の表示に関する改善要請相次ぐ
  3. 「緊急入荷!! 新型コロナウイルスの不活性化に成功!」の表示も指摘
  4. 最後に
目次

1. アルコールの配合割合が表示内容を大幅に下回る

消費者庁は5月19日、化粧品輸入会社である株式会社メイフラワー(以下「メイフラワー」)に対し、景品表示法に基づく措置命令を下しました。販売していた手指用洗浄ジェル「ハンドクリーンジェル 300ml 71%」の表示について、優良誤認と認定しました。

ハンドクリーンジェル 300ml 71%

消費者庁「株式会社メイフラワーに対する景品表示法に基づく措置命令について

同商品は、ミドコスメティクス社(韓国)からの輸入をメイフラワーが代行し、今年3月から販売していました。ミドコスメティクス社から提供された化学物質等安全データシート(SDS)及び全成分表から、アルコール濃度が71%であることを確認したとしています。しかし、日本国内の分析試験所で再計測を行ったところ、5~30%程度と表示濃度が大幅に異なることが判明しました。消費者庁に報告・相談を行い、4月14日、自社サイトでお詫び文の掲載と、返品対応する旨を発表していました。

また、厚生労働省と経済産業省、消費者庁が合同で開設している「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」という特設ページでは、手や指などのウイルス対策として、アルコール濃度70%以上95%以下のアルコール消毒液を用いることが推奨されています。

そのため、アルコール濃度を実際よりも高く表示することで、消費者の購買意欲を煽る目的があったと推察できます。

2. 新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品への等の表示に関する改善要請相次ぐ

上記事例だけでなく、新型コロナウィルスで募る不安に乗じて、多数の商品でコロナウィルスを用いた誇大広告が多く出されています。消費者庁は6月5日、インターネット広告で新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする消毒・除菌商品を販売していた8事業者(7商品)に加えて、健康食品を販売する27事業者(31商品)に対し、表示の適正化について改善要請等を行っています。景品表示法(優良誤認表示)と健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)に基づく緊急的追加措置で、第3報となります。

根拠のない商品に注意

消費者庁「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品等の表示に関する改善要請等及び一般消費者等への注意喚起について(第3報)

3. 「緊急入荷!! 新型コロナウイルスの不活性化に成功!」の表示も指摘

次に、どのような広告が消費者庁から指摘を受けたのか具体的に見ていきましょう。

消毒・除菌商品では、「緊急入荷!! 新型コロナウイルスの不活性化に成功!」「新型コロナウイルスを瞬間破壊!」「新型コロナウイルス、ノロウイルス、O-157、インフルエンザの予防や消臭に有効です」などの明らかな誇大広告と感じさせるものから、「新型コロナウイルス対策」「全てのコロナウイルス近縁のウイルスに対して、不活性化が期待できることが類推できます」などの控えめな文言や表記にも指摘が入っております。

健康食品では、「ワクチンも治療法もまだない中、海藻類のフコイダンが新型コロナウイルス肺炎の重症化を防ぐ」「新型肺炎・免疫パワーに必須のビタミンD」「新型コロナウイルスに対する免疫機能向上に役立つテアフラビン(紅茶ポリフェノール)」など免疫力向上によりコロナウィルスを予防できるという表現が多いです。

しかし、新型コロナウィルスについては未だ未解明なことが多いため、控えめな表現であったとしても、現段階ではコロナウィルスという言葉を用いた広告表示は行うべきではないかと考えられます。

4. 最後に

読者の皆さんの一助になればと思い、今回ご紹介した事例から、今後具体的にどのような下記のような行動をとっていくべきなのではないかと思います。

・景品表示法等の法律を理解する

・自社製品の有用性を第三者機関に認証をもらう等してエビデンスを作る

・法律を踏まえた上で自社の広告が誇大広告となっていないか事前に確認する

非常に一般的な内容になってしまいましたが、広告を打つ際には、景品表示法を踏まえて違反しないように、事前準備をすることが重要になります。

この記事を通して、景品表示法違反の事例の理解から、景品表示法を踏まえた上でどのように広告を売っていくべきかまで、読者の皆様の参考に少しでもなれば幸いです。

出典一覧:

消費者庁「株式会社メイフラワーに対する景品表示法に基づく措置命令について

日本経済新聞「アルコール濃度を虚偽表示 洗浄剤、輸入企業に指導

メイフラワー「ハンドクリーンジェルのアルコール濃度不足についてのお詫びとお知らせ

厚生労働省「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)

消費者庁「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品等の表示に関する改善要請等及び一般消費者等への注意喚起について(第3報)

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