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【連載】iPSの世界へようこそ ~細胞ビジネスを読み解くヒント:将来展望編

全3回でiPS細胞ビジネスの現状と異業種の参入余地を探る連載「iPSの世界へようこそ ~細胞ビジネスを読み解くヒント」。今回が最終回となります。

これまでiPS細胞とは何か?どういった研究が行われているのか?についてお伝えしましたが、第3回では今後異業種の企業が参入する余地について業界の展望を含めて読み解いていきたいと思います。

 

まだ過去記事を読んでいない方はこちらへ

第1回:iPS細胞の基礎知識編

第2回:iPS細胞の研究動向編

 

 

1. 異業種企業の参入事例

第2回では、研究機関と企業が行う共同研究事例から最新の研究動向についてお伝えしました。研究機関だけで再生医療や創薬研究を行うのではなく、武田薬品工業やJTなどの企業も自社のアセットを活かして積極的に参画しています。

では、武田薬品のように医療と関係が強い業界以外の参入状況はどうでしょうか。iPS細胞の市場では、直接的な研究だけではなく、研究に付随するソリューション(サービス/製品)を提供をする企業も多くいます。では具体的な事例をご紹介しましょう。

 

1-1. 日立製作所「iPS細胞大量自動培養装置」

参考:日立製作所

1つ目は、日立製作所の事例です。日立製作所では、2019年3月に大量のiPS細胞を自動的に培養できるシステム「iACE2」という製品を発表しました。細胞培養とは、1つの細胞を増殖し、研究に使える状態で維持することです。これまで大量の細胞を安定的に培養させることは難しいとされていたようですが、このシステムでは、大量の細胞培養や細胞の観察を無菌状態で行うことができるようで、品質の高い細胞を安定的に供給することが可能になります。

日立製作所では、これまでも無菌性に優れた自動培養の技術を用いて、以前から培養システムを開発していましたが、2015年からiPS細胞の研究を行っていた大日本住友製薬と共同でiPS細胞向けのシステム開発を行っていました。今後日立では、培養システムだけではなく、細胞培養施設や関連機器、受託製造サービスなどを提供し、再生医療の普及に向けた事業展開を行っていくようです。

 

1-2. ウシオ電機「細胞モニタリングの光学測定装置」

参考:ウシオ電機

ウシオ電機では、2018年に熊本大学や九州大学と連携して培養細胞の状態をリアルタイムでモニタリングできる「光学測定装置」を開発しました。これまで培養された細胞の品質を管理するためには、人がサンプルとなる細胞を培養するためのインキュベータという装置から取りだして測定しなければならず、人為的なミスによる細胞の汚染や品質の不均等性などの課題がありました。しかし、開発された光学測定装置では、インキュベータから細胞を移動させなくてもリアルタイムで品質をモニタリングできるようになります。

ウシオ電機は、従来、光応用製品事業ならびに産業機械を開発しており、このシステムでは、ウシオ電機が保有する「SOT技術」というアセットをiPS細胞領域の製品として応用した形となります。

※SOT技術
シリコーン・オプティカル・テクノロジー(Silicone Optical Technology: SOT )。光学系部分をシリコーンで形成し、コンパクト、低コスト、かつ非常に高い迷光除去を実現する技術

iPS細胞の研究では、こういった各社の技術アセットを活用したシステムやサービスのニーズは高いと想定されます。

 

2. iPS細胞市場の展望

ここまで、iPS細胞市場における、異業種の参入事例をお伝えしました。
iPS細胞を含む国内の再生医療周辺産業は、2030年までに6,000億円を超える市場規模の拡大すると考えられています。

現在、異業種の企業が参入する事例として多いのは、自社の技術アセットを活かした製品開発がしやすい設備・装置類の製品が目立ちます。
先ほどお伝えした日立製作所とウシオ電機の例も、設備・装置類にあたります。

ただ、今後は消耗品類やiPS細胞に関連するサービス市場の成長性が高いと想定されています。

参考:SEED PLANNING

最も伸びると想定されているサービス領域では、細胞の管理や試験の受託などももちろんですが、民間保険やITソリューションのニーズも高まっていきます。

例えば、NTTデータではヘルスケア分野でのデータ活用実績を活かし、IoTやAI、アナリティクスを活用した技術を活用。京都を本拠地としてiPSテクノロジーの事業化を推進するiPSポータル社と共同で、iPS細胞を活用した研究に関するさまざまな課題の解決、ひいてはライフサイエンス分野全体の発展に寄与するプラットフォームの開発を目指していくとしています。

参考:NTTデータ

また、民間企業ではないですが、東京大学では、2019/5にAIを用いてiPS由来分化細胞の品質を管理できるソリューションを開発。このソリューションでは、市販のノートPCで分化細胞の品質判定ができるようになるようです。

参考:東京大学

 

3. 最後に

このように、iPS細胞の領域における参入は、医薬品製造業としての参入だけではなく、周辺よシステムやサービスが中心になっていくと考えられます。

今後、2030年までに6,000億円以上に拡大すると言われるiPS細胞の周辺市場。今後多くの製造業、通信業にとって注目すべき市場ではないでしょうか。

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久本 勇馬

久本 勇馬

VRベンチャーで社内新規事業立ち上げを経験後、 弊社に参画。デザイン思考を用いた新規事業企 画や、グローバル案件を担当。 【得意領域】再生医療、グローバルスポーツビジネス、xRなど 【趣味】サッカー、囲碁