新規事業コンサルタントの保木です。
暑さにやられ、涼もうと思って書店に入りました(雑多な東京で落ち着くのは書店ですよね?)。そこでたまたま目に入った「ビジネスモデル症候群」という本を立ち読みしました。タイトルを目にしたときに、自分の中でモヤモヤしていたことを言語化していそうな気がしたからです。
モヤモヤの理由は、新規事業のプロジェクトをする中で仮説検証やプロジェクトのゴールが「ユーザーの課題を把握すること」ではなく、「クライアントが考えたビジネスモデルを、成り立たせるための情報収集」を要望頂くことへの課題意識があったためです。
なぜこの課題意識持っていたというと、新規事業は最初の構想から数十・数百回とターゲットや仮説を変えつつゴールに近づき、最終的なビジネスモデルに落ちていくものだと考えていますが、「このビジネスモデルを考えているので、成り立つために情報収集してほしい」というスタンスで、ご依頼いただくことが比較的多いためです。
この背景には、大企業の新規事業のほとんどが、ステージゲート方式の「審議会」なるものがあり、そこでの重要項目が「ビジネスモデル」だからだと考えています。
審議会:部長・役員クラスで構成され、新規事業テーマを審査し、投資判断をする制度
構想するビジネスにおいて、「ユーザーの課題」よりも「我々がどう提供するのか」という視点に立っているからでしょう。もちろん、ビジネスモデルを図式化しないと、何をやろうとしているのかを上長に理解してもらいにくい点もありますが、課題に着目しないビジネスモデルは、それこそ絵に描いた餅だと思います。話を書籍に戻すと、大きく2つの課題提起をしていました。
①スタートアップ(大手企業の新規事業も含む)はビジネスモデルを考えすぎて失敗している
②仮説検証は確証バイアスが大幅にかかり、自分が聞きたくない意見を無意識に切り捨てている
確証バイアス:自らの考えを検証する時、それを支持する情報ばかりを集め、反対意見を無視したり集めようとしない傾向のこと
①の補足として、有名なジレットの替え刃モデルの事例が面白かったです。ジレットは、剃刀本体を安く販売し、替え刃のランニングコストで儲けるビジネスモデルを作り、プリンターのインク交換サービスなど、様々な固定収入ビジネスのモデルとなったとケーススタディの本ではよく紹介されています。
しかし、筆者が調査をすると、もともとジレットは「替え刃の固定収入モデルで儲けよう」と考えていたわけではなく、最終的にたまたまそうなったという結果が得られたようです。ビジネスに限りませんが、人は他者が成功したことに法則を考え、サクセスストーリーに仕立てあげてしまうことの例だったようです。
解決策を一言でいうと「新規事業は、本質的な課題に向き合おう」ということでした。その方法として、マンダラチャートを使用したり、経営視点のメンターをつけたほうがいいということです。
マンダラチャート:有名なアイデアの発想法で、考えたいテーマに対し64マスの解決策を考えることで、無理やりアイデアを発想する方法。弊社も、技術・サービス用途の仮説構築で使用することがあります。
解決策に関しては、「まあそうですよね笑」という感想ですが、新規事業で陥りがちな失敗については具体的に書いてあったので、興味がある方は読んでみて下さい(私は結局買いました)。
ただ今の時期、外出多いビジネスマンが注意するべきは「ビジネスモデル症候群」ではなく、「熱中症」だということは言うまでもありません。。