会社名のネーミング発想法。コンサルタントだからこそできる「ネーミングサービス」の導入事例

会社名のネーミング発想法。コンサルタントだからこそできる「ネーミングサービス」の導入事例

この記事は、新会社や新商品のネーミングをどうすればいいか悩んでいる方向けに書きました。

起業や新商品(サービス)開発では多くのタスクがありますが、その中でも重要なのがネーミングです。優れたネーミングは覚えやすかったり、由来に共感しやすいという特徴があります。一方で、この事実はあまり知られていませんが、ある要素を考えないネーミングにしてしまうと事業上の減点要素になりえます。生みの親だからと言って、好きな名前にすればいいわけではないわけですね。

ステラアソシエでは、自社の会社名を決めるにあたってコンサルティング会社ならではの思考法を用いてネーミングを行いました。(このプロセスも公開しているので、興味がある方は「会社名のネーミングで失敗しない方法」を参照下さい)思考錯誤した甲斐があって、会社が設立されてから取引先の企業様に由来を伝えるとポジティブな反応をいただくことが非常に多いです。

これを社外の企業様にも提供できないかと考えていたところ、なんと会社設立を予定されていた方からご依頼をいただくことができました。サービスを活用いただき、弊社がご提案した会社名にて登記が完了しています。

本記事では、「新会社のネーミング」という重要な作業をなぜご依頼いただけたのかサービスをどのように提供したのかどんなアウトプットが出たのか、順を追ってご紹介します。

調べられたことがある方ならご存じだと思いますが、「企業名 由来」「サービス名 由来」などと検索すると由来は出てきます。ただ、その作業プロセスは公開されていません。企業名を考える大方針やボツになった案がどういうものだったのか、最終候補はどういうものでなぜ別の案にしなかったのかという思考過程が一番気になるところだと思います。

一般的に、新設会社のネーミングをお仕事として支援する機会自体があまりありません。そんな中、今回は特別にご依頼主様から許可をいただいての事例公開となります。

1つの会社名が生まれるまでのストーリーをぜひ最後までご覧ください。

目次

案件概要

ご依頼主であるS様は、染料を用いて革に染色加工を行う企業を設立される予定でした(2022年6月、記事公開時点では登記済み)。

依頼背景としては、S様より以下のように伺っています。

  • 自分で発案する場合は自社が属する業界の企業名に近い案しか出せない可能性があり、業界に捉われずに多様なアイデアを求めたかったためにアウトソースを選択肢として考えた
  • ステラアソシエを選んだ理由は、インターネットで複数社の比較をした中で豊富な経験、知識、取り組み、実績に共感した(「会社名のネーミングで失敗しない方法」を見た)

また、案件開始時に2つの要件を頂きました。

  1. 技術に強いイメージを出したいため「カタカナでのネーミング」であること
  2. BtoBサービスなので取引先に違和感を感じられないこと(ポップすぎる名称はNG)

カタカナを使いつつも堅実な印象を与えたいというバランスを求められています。この2点を踏まえてネーミングのプロセスを設計していきました。

ネーミングでこれだけは守りたい注意点

本題に入る前に、ネーミングをする上での前提条件を説明します。本記事で一番伝えたいことなので、これだけでも覚えてもらえるとネーミングで大きなミスは起きないはずです。

ネーミングで守らないといけないことは、指名検索で他社のウェブサイトが上位に出てこないことです。これがとにかく重要です。(本記事は企業名のネーミングですが、商品やサービスなどあらゆる名称に共通する注意事項です)

指名検索とは、Googleの検索にて企業名や商品名といった「固有名詞」で検索することを指します。その企業を認知している方が、HPにアクセスしてより詳細を知りたい場合に行います。

ステラアソシエを例に挙げると、弊社をテレビ番組やSNSで認知した後に、もっと詳しく知りたいと思った方が「ステラアソシエ」と検索を行います。その時に弊社のHPが検索結果の最上位に出てくる必要があるわけです。類似するキーワードが多い企業名にしてしまうと、弊社について調べたい方がHPを見つけることができないという状況が発生してしまいます。これはネーミングをする上で一番やってはいけないことです。

弊社が把握しているケースだと、類似キーワードが多すぎる会社名を名付けてしまったために、指名検索に対してリスティング広告をかけている企業を見たことがあります。社名検索をした方がHPに来てもらうためだけに広告費を払っているということです。

これは非常に無駄なコストといえます。とはいえ会社名をコロコロ変えるわけにもいかないので、仕方がなく広告費を捻出しているわけです。

他にも被りやすい例を具体的に挙げると、カタカナやアルファベット2文字・3文字の会社名は指名検索でヒットしづらい傾向があります。少ない文字数だと、様々な文脈でキーワードが使用されているためです。架空の例ですが、「RDD」「HIA」といった会社名にすると類似キーワードがたくさん出てきてしまいます。検索時にユーザーが「RDD株式会社」と入れてくれればヒットしやすくはなりますが、いちいち企業形態を入れずに検索する方が多いので、株式会社/合同会社といった企業形態を省略してもヒットするのが望ましいです。

弊社の検索状況をGoogleサーチコンソールで確認しても「ステラアソシエ株式会社」よりも「ステラアソシエ」の検索数が数倍多いです。株式会社を入れずに検索する人が大多数ということですね。後々のマイナスを食らわないために、本案件でも「指名検索で名前が被りにくいネーミング」ということを大前提に検討しました。

会社名のネーミング方法

企業のネーミングの注意点を把握したところで、クライアントワークとして行ったネーミングの流れをご説明します。大きくは6つのステップに分かれ、各ステップについての詳細をご説明します。

 下記5つのステップになります。

 ・ステップ1:競合調査
 ・ステップ2:本質理解
 ・ステップ3:キーワードの抽象化
 ・ステップ4:ブレスト
 ・ステップ5:最終化
※プロジェクトとしてはステップ4で出した一次案の一覧をS様に提出し、最終案の方向性を固めています

ポイントとしては、ステップ1~3が前工程にあたり、具体的にネーミングのアイデアを出すのがステップ4以降になる点です。いきなり案を出し始めるのではなく、3つの前工程を設けています。この前工程を設けることで、アイデアの質・量を共に向上させることができます。

なぜそれが必要か、どういった効果があるのかを説明します。

ステップ1:競合調査

最初に行うことは競合調査です。いきなり会社名を考えてしまうのは得策ではありません。インプットが無ければ質のいいアウトプットは出ないからです。(ネーミングに限った話ではありませんが)

競合調査では、クライアントが属する業界で既に事業をしている企業、団体の名称と由来をインプットします。本案件であれば、S様の立ち上げる会社が化学や皮革に関連した事業内容のため、大手化学メーカー、バイオベンチャーや皮革に関連する団体や企業における会社名の由来をインプットしました。

競合調査の事例の紹介をします。

株式会社クラレ:「倉敷」(クラシキ)の「クラ」と「レーヨン」の「レ」を取って命名
株式会社ニッピ:創業時の「日本皮革株式会社」の「日」(二)と「皮」(ピ)を取って「ニッピ」としたと想定
ロカシュー(LOCUSHOE):イタリア語のロカリタ(軌跡)+シューズ(靴)を合わせた造語
エディットフォース株式会社:「エディット」(DNA/RNA編集)+フォース(技術力)の組み合わせ
株式会社サイフューズ:「細胞」を意味する“cyto”と「融合」を表す“fusion”を組み合わせ

下記はバイオベンチャーのリストの一部です。

競合調査を通じて分かったことは、2つの単語を組み合わせた造語が使われるケースが多いことでした。単語1つだけだと先に述べたように他社やウェブサイト全般ともバッティングしがちですし、オリジナリティも出ません。(ここでいうオリジナリティはクリエイティブな意味合いではなく、会社名を聞いた時に唯一性を認識し覚えてもらいやすいという意味です)

また組み合わせは2パターンです。

①商材(革、化学、DNA、細胞)×場所
②商材×商材を強調する名詞(技術、融合)

ネーミングの構造を見ると、化学や革関連企業の由来は商材が軸になっているようでした。このように競合調査をするとその事業分野の企業名の傾向が分析でき、自社のネーミングの発想がしやすくなります。

分析ができたら次のステップに進みます。

ステップ2:本質理解

本質理解とはクライアントの技術、事業内容の本質を捉えることです。今回で言えば、S様の事業の根幹である「革」「染料」を理解することになります。

「革なんて知ってるよ」と思考を止めてしまうとネーミングに深みが出てきません。革靴をはじめとした革製品を通じて革がおよそどういうものなのかは知られていますが、ネーミングをするならもっと深堀りたいところです。

そこで質問ですが、皆さんは革と皮の違いが分かりますか?

弊社も今回の案件を通じて知ったことですが、動物から剥いで未加工の状態の皮膚が「皮」、その皮を製品として使用するためになめし加工(皮の保存が効くなめし剤に浸透させる加工)を施したものが「革」です。皮と革という漢字があることはご存じだと思いますが、こういった違いがあったんですね。

このなめし加工から派生して、「革」が使われる言葉には「革命」「革新」と言った言葉があります。なぜ「皮命」「皮新」ではないかというと、革は動物の皮膚である皮を加工して新しい価値を生み出すというニュアンスがあると推察しました。

そのままの状態では価値が無い「皮」を、価値がある「革」に生まれ変わらせる、新しい価値を作り出すという意味を持たせることができるという発見です。

この気づきに繋がったのは、革の類義語辞典を参照し、言い換えや比喩表現もインプットしたことも関係しています。革の類義語に革新、レボリューション、バージョンアップという言葉が出てきて、最初は関連性がピンと来なかったのですが、革の本質を理解することで共通項を見出すことができました。

一見無関係のように思える類義語ですが、言葉の本質を理解すると共通するニュアンスを理解できるようになります。

同様に「染料」の本質も確認していきます。染料と似たものに「顔料」があるため、違いを把握する必要があると考えました。

調べてみると「顔料」が革の表面だけを染める材料であることに対して、S様が手がける「染料」は表面だけではなく革の内側から染めるという違いがあることが分かりました。「表面的ではなく内面から」というポジティブな意味合いを持たせらそうなので、アイデアを出す際のインスピレーションとなりそうです。

本質理解を飛ばして「革の企業だからレザー○○」というアイデアを出すことは簡単ですが、このような一見地味な工程を挟むことでアイデアの深みが出せると考えています。

ステップ3:キーワードの抽象化

続いて行うのが、キーワードの抽象化です。ネーミングの5つの工程の中で一番難しい作業になります。抽象化とは、先ほど本質を理解した革や、キーワードである化学といった用語を言い換えや比喩表現に変換することです。

なぜこんなややこしいことをするかというと、ステップ2と同じでアイデアの質・量を向上させられるためです。響きがいい会社名、指名検索がいい会社名に近づけるために、直接的な表現(例えば化学株式会社、革株式会社)から離れて抽象化を行います。

S様は「染料」「革」に関連する事業を行うため、この2つのキーワードについて類義語の調査やメタ化等、抽象化を行いました。

「染料」の抽象化を例に挙げます。画像は、実際に抽象化した作業の例です。

ステップ2で染料の本質が理解できたので、抽象化を行っています。染料は革の内側から染めるという特徴があったので、それを言い換えています。

ステップ4:ブレスト(一次案)

3つの前工程が完了し、ようやくアイデアを出していきます。

ここではアプローチとして和と洋に分けて発案するとアイデアが出しやすいです。犬や猫を飼い始めるときに、小太郎にするかジョンにするかの違いです。その子の雰囲気によって和が似合う、もしくは飼い主の意向で洋にしたいというものがあると思います。本案件ではそれらの制約はなかったので、一次案では両方の案を出しました。

下記は一例になります。

和のアイデア

  • ベッカク/別革(べっかく):他とは違う、質の良い革の商品(別格と革をかけた造語です)
  • ソメモノ

洋のアイデア

  • レザーフォース:○○フォース(力)という名前が数年前から流行っている。レザーに力を与えるという意味
  • レザーパレット:革を塗るためのパレットに自社を見立てる。色を変えるための道具になる、提供するという意味
  • ケミフォース:ケミカルとフォース

これらのアイデアを20ほど検討し、一次案としてS様に提出しました。

S様からは以下のコメントを頂きました。

  • 一次案の中ではレザーフォースが良い
  • chemical, Technical  を想像できるワードを中心に再考してほしい
  • 染料、レザーというキーワードにはこだわっていない

コメントを通じて、和よりは洋、男性的なニュアンスを好むことが分かったのはよかったのですが、3つ目のコメントでアウトプットが難しくなりました。ご説明してきた通り、ステップ1~3で行った前工程は唯一性を持たせ、他とは被らないネーミングにするための準備です。そのために革や染料というキーワードを軸に発想をしました。

しかし、それらの制約を取っ払って「化学や技術を想起できればなんでもよい」ということになりました。化学や技術に関連する企業は非常に多くあるので、その中で違いを出すことは難易度が上がります。

ただ、難しいからこそ案件としてご依頼頂いているわけなので腕の見せ所でもあります。違いを出すために、ネーミングの方向性として要件定義を以下のように設定し直しました。

  • 響きが男性的な言葉
  • 被りにくい言葉

この要件を満たすために、まず言語として英語から極力離れようと考えました企業名に限らず英語は英語圏以外の国でも使用されるため、名称が被る確率が一番高いです。当然、日本でも企業名やお店でたくさん使われてますよね。

制約が少なくなった以上、言語でも被りやすいと益々唯一性を見出しづらくなります。同様に話者が多いフランス語も除外しました。意外と日本でも店名などに使用されていることが多いためです。

そのため、より被りづらく語感が男性的なギリシャ語やラテン語、スペイン語を使用することにしました。個人的な感覚にはなってしまいますが、ギリシャ語やラテン語は力強い響きを感じるので、S様の意向にも沿った言葉選びができると考えました。

ステップ4:ブレスト(最終案)

ギリシャ語などを使用する方向性が決まったところで、最初に行ったのはそれらの言語でポジティブな意味を持つ単語をリストアップすることです。2つの単語のかけあわせという前提は同じなので、「chemical, Technical」×ポジティブな単語という組み合わせを作るための単語を知る必要があります。

以下はリストの一部です。

次にchemical, Technicalは英語なので、ギリシャ語等に変換しました。

chemical(化学)は以下の通りです。

  • キミア/χημεία(ギリシャ語)
  • ケミア/chemia(ラテン語)
  • キーミカ/química(スペイン語)

それらをもってかけ合わせを行います。

(黄色表示はS様に推し案として提出したものです。所感は弊社の見解です)


ステップ5:指名検索チェック

ネーミングが出そろいましたがこれで終わりではありません。最後にやるべきことが残っています。注意点に挙げた、「指名検索で社名が埋もれないか」をチェックする必要があります。やり方は簡単で、ネーミングを一つずつGoogle検索を行い、上位ページの被り度合いやドメインの強さを見ていきます。

チェックした例が以下です。

HPを作成せずとも、上位に出てくるかどうかは検索すれば事前に判断することができます。これで問題ないようであれば、あとは好みで最終案を決めるだけとなります。

指名検索チェックをした候補の中から、S様は最終的に「ラブロケミア」を選ばれました。ラブロケミアは、ラブロ(ギリシャ語で輝かしい)+ケミア(ラテン語で化学)の造語です。化学の意味合いがありながら力強いニュアンスを感じる会社名になりました。同名の商品や企業もおらず、指名検索も問題ありません。

S様からは「薬品販売業者らしくない良きイメージを塾考していただきまして、感謝しております」というコメントをいただけました。

他にもレザーアルコン(革の第一人者という意味。アルコン/ Archonはギリシャ語で第一人者、支配者の意味)や、テックエレンシア(後世に残る技術という意味。エレンシア/herenciaはスペイン語で遺産、レガシー)といった最終候補もありました。

まとめ

1つの会社名が決まるまでのプロセス、いかがでしたか。

本記事を読んでいただいて「ネーミングは意外と難しい」と思われたかもしれません。余談にはなりますが、ステラアソシエはネーミングを専門に行っているというよりも主事業は大手製造業向けのコンサルティング会社です。

クライアントが保有するとっつきにくいシーズ技術の本質や価値を理解した上で、マーケティングのご支援を日々行っています。その頭の使い方をネーミングにも応用し、単に化学、革といったキーワードから発想するというわけではなく、技術・事業の特徴から発想するアプローチを取りました。

このようにコンサルティング案件で使用するロジカルシンキングを用いて、企業名のネーミングを行っております。もし、新会社や新商品のネーミングでお困りでしたら、こちらのフォームより問い合わせください。

後日談になりますが、ラブロケミア様からはネーミングに加えて、ロゴの制作も依頼いただいています。

ロゴ同様に、細かい設定はいただかずに青、緑、オレンジなどを使いたいという要件のみで制作しました。化学メーカーを想起できるようなデザインを検討し、下記のロゴを納品させて頂きました。

oの箇所にデザインしているのは分子構造です。化学を表現していますが、試験管のような直接的すぎる表現ではなく、よく見るとわかるようになっています。

ネーミングと併せてロゴ制作も弊社にて承っておりますので、ご興味がある企業様もお問い合わせください。

業界経験豊富なコンサルタントが貴社をサポート

保木 佑介

大学時代、ヤフーグループにて求人サービスの立ち上げに関わり、サービスリリースから運用までの経験をする。RPAホールディングスにて、外資系セキュリティベンダーの営業改善プロジェクト等に長期インターンとして参画。正社員入社後は、大手製造業が保有するR&D技術の出口探索を中心に、100以上の新規事業プロジェクトに従事(主な担当業界は化学とSIer)。2018年3月、RPAホールディングスのマザーズ上場を機として、同5月にステラアソシエを創業。2020年、No.1を証明する「ファーストテックサーチ」をリリースし、テレビCM等の根拠データとして利用される。その後、No.1調査の有識者としてNHK「クローズアップ現代」などに出演。

経験豊富なコンサルタントが戦略立案から施策実行まで伴走します

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