近年、再生可能エネルギー、クリーンエネルギーなどの言葉を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の中でも、日本国内で最も導入量の多い、「太陽光発電」に関する現状や課題についてと、その裏に潜む国策の整備不足など、国としての課題についても見ていきます。
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1.太陽光発電の現状
再エネの中には、以下のようなものが代表として挙げられます。
・太陽光発電
・風力発電(陸上・洋上)
・バイオマス発電
・水力発電
そもそも、再エネが注目された背景は何だったのでしょうか?
再エネに注目が集まる前の日本国内の主な発電源は、原子力発電、火力発電などが主でしたが、人体への有害影響、大気汚染、発電資源の不足など、様々な要因により、既存の発電方法では電力供給に限界が来ると予測されました。
こうした課題を包含しない、新時代の発電方法として注目されたのが、自然エネルギーを電力に変換する、再生可能エネルギーです。
その中でも、施設の屋根に・山の斜面に・耕作放棄地に、設置することが出来る手軽さと、日本の高い日射量との親和性が高かったことから、太陽光発電の導入が最も早いペースで、国内の導入が進みました。
そこには国策として、FIT(固定価格買取)制度という追い風も起因しています。その結果、2016年末時点で世界で2番目に太陽光発電を導入している国になるなど、異常なほどのハイペースで導入が進みました。
出典:資源エネルギー庁
現在では、およそ3,300万kWの発電施設が国内に導入されています。
2.太陽光パネル廃棄の現状
再エネの導入を最前線で牽引してきた太陽光発電に、今新たな問題が生じています。
それが、使用済み太陽光パネルの廃棄問題です。
出典:資源エネルギー庁
太陽光パネルは、急速に導入が進んだこともあり、耐用年数が経過して、廃棄される時期が一点集中してしまうという懸念があります。
出所:日経BP
現状、国内ではごみ処理場の処理能力以上の廃棄が問題となっているため、ピークである2036年前後の太陽光パネル廃棄に対処できるキャパシティが存在しないのです。
さらに、メーカーによっては、焼却処分すると有害物質が出てしまうものもあることが判明しました。
こうした背景から、廃棄をして処分する、以外の方法での太陽光パネル処理の必要性が示されているのです。
3.太陽光パネルリサイクルの現状
そこで注目を浴びたのが、リユースとリサイクルになります。
ただここで大きな問題となったのが、以下の3点です。
・リユース(リサイクル)出来る部材と出来ない部材の切り離しが面倒
・耐用年数を経過しているため、リユース可能かどうかの判断が難航
・太陽光パネルには複数の種類が存在し、かつ同一種類でもメーカーによって材質が若干異なるため、すべてを同じ工程ではリサイクル処理できない
「2」で示したグラフからもわかる通り、現状での太陽光パネル廃棄量はまだまだ多くありません。
しかし、今後の需要を考えると、早急な技術開発が必要とされているため、太陽光パネル事業に参入している企業は、新技術の開発活動に力を入れています。
出典:平林金属株式会社HP
一点、ここで私が取り上げたい情報があります。
「太陽光パネル廃棄に関して、国がリサイクルの義務化を検討している」という点です。
最終処分場の問題や、有害物質の排出などの問題により、国としても太陽光パネルを処分場に回すのではなく、利活用を検討する方針を促しています。
それだけ、注目度の高い課題であることがわかります。
しかし、処分場のキャパシティ問題、有害物質排出の可能性、だけでそこまで国が動くというのは、若干過剰な対応のように感じます。
そこで、なぜ国がここまでの対応を検討しているのか、住民への影響という観点で考えてみましょう。
4.太陽光パネル廃棄が一般住民に与える影響
業務用の太陽光パネル廃棄における住民影響としては、大きく以下のような点が挙げられます。
業務用太陽光パネル廃棄によって、処分場が飽和することで、
・家庭用太陽光パネル廃棄に規制がかかる
・業務用の太陽光パネルに関しても規制がかかり、地域内に長く存在することになる
さらに、これらの影響により住民には以下のような不安や疑問が出てきます。
・耐用年数を超過した太陽光モジュールを設置していて問題はないのか
・災害により破損された際に、即座に処分に回してもらうことが出来るのか
しかし、こういった不安や疑問に対する明確な答えが用意できていないのが現状です。
なぜなら、太陽光パネルの導入が始まったのは歴史的には最近のことであり、廃棄が遅れた場合の影響などが十分には研究されていないからです。
そのため、住民の不安は募るばかりです。
しかし、私の疑問は、
「ここまでの不安があるのに、なぜ廃棄に関しては住民運動が起こらないのか」
という点です。
実は、太陽光発電をはじめとする再エネの導入には、地域の住民や、環境保護団体などから設置反対を表明する運動が起こる事例が多数存在しています。
それは、設置した場合の影響が未知数である点や、耕作地に影響が起きる、山林に設置した場合の土砂災害の恐れなど、様々な懸念事項から起こっているのです。
しかし、同様に多くの懸念事項が存在する廃棄問題については、ほとんど住民からの意見や、明確な廃棄日、廃棄方法、確実性を要求する運動が行われることはないです。
それは、これまで反対してきたものが撤去されることから来る安心なのか、もしくは単に撤去に関しては知識がないのか、廃棄に関する問題に意識が向いていないのか様々な要因により、政府の着目が遅れたのは事実です。
この問題に代表されるように、国策としての対応は、問題が現実味を帯びてから対応策が検討されるといった流れになっています。
ここで、国策は国が主導で、国民のために策定しているものであるという安心感と信頼の一方、ずさんな体制や、穴のある中身となっていることが課題として挙げられます。
そこで、国策の穴や課題について見てみましょう。
5.国策の穴と課題
2013年に施行された、
「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」
では、耕作放棄地などの農地転用で再エネを設置することを促進する法律になります。
その際、必ず自治体に関して、地域便益の供与(地域住民の雇用、売電収入の一部を自治体に基金化など)を必須としているのが特徴です。
この法律に則して、基本計画書を策定する際、問題が発生した場合に撤去をすることを約束する文章や、問題の定義などが記載されています。
一方で、廃棄の方法に関しては一切記載がされていません。
再エネへの関心の高まり、企業のCSR活動としての環境活動、ESG投資(環境分野への積極投資)など、環境分野への関心が高まっているのに対し、長期的な目線で事業を考え、導入後に発生するであろう部分への対応策を明確にしていないといった課題が存在しています。
国策は目の前で起きている事象に対する解決策の制定に長けている一方で、その後の影響などまで目を向けた対策が出来ていないという穴が存在しているのです。
これは、国規模での解決策を検討している責任があるため、課題が事実として証明されていないと、具体的な対策を想像で提示することが世間体的に許されないという背景があるのではないかと考えられます。
したがって、民間企業は国策に振り回されて事業を展開するだけでは、あくまでレッドオーシャンにのみ事業展開をしていく企業となってしまい、パイオニアになることは出来ません。
ブルーオーシャンに攻め込み、価値ある事業を世の中に出していける新規事業を考案するためには、
今起きている課題を正確に把握することはもちろん、そこに対する国策も把握した上で、
世の中の動向を掴み、その後の派生として現れる想定課題やリスクを検討していく必要があるでしょう。
6.最後に
読者の皆さんの一助になればと思い、具体的に、どのような行動を私だったらとっていくかを紹介したいと思います。
- 今回把握した内容を元に、自身で正確な現状・課題を把握
- 課題に対する取り組み(民間企業・政府ともに)を調査
- 上記の取組によって解決される部分と解決されない部分、未知数の部分を分類
- 一部課題が解決された未来を予想し、その場合に新たに想定される課題やリスクを検討(その際、長期的な目線で思考をする必要がある)
- 想定した課題やリスクが起きる可能性を検討
- 可能性が高いものに対して、解決策を考案
- 解決策の中で、実現性と実効力の高いものを選定し、事業化を検討
非常に当たり前なことを記載しましたが、いかに状況を正確に把握し、そこから長期的な思考を回していけるか、現状の解決策や課題だけにとらわれず発想が出来るのか、といった部分が非常に重要になってくるのです。
そこを理解して頂ければ、私が今回このようなテーマを取り上げた意味があったのではないかと考えます。
この記事を通して、日本の太陽光パネルの現状と、こういった課題に対してどう思考をしていくべきかということまで、読者の皆様の参考に少しでもなれば幸いです。