【連載 MaaSは日本社会を救うか?】第2回 MaaS 3つのビジネス領域

全8回でお送りする「MaaSは日本社会を救うか?」第1回「MaaSの定義」では、MaaSと呼ばれるものの定義、範囲について解説しました。

第2回はMaaSの範囲を因数分解し、各領域についての概要をご紹介します。

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1.MaaSの全体構成


MaaSは、「スマートシティ」、「モビリティサービス」、「インフラ」の3分類で構成されます。

中心となるのは、モビリティ単体で提供されるライドシェアなどのシェアリングサービスや、今後普及するであろう自動運転タクシーを内包する「モビリティサービス」です。
(ここでいうモビリティには、車だけではなく鉄道やドローンなどあらゆる輸送手段が含まれます)

また、EVや自動運転が普及するには、充電設備や自動運転車専用レーンなどの「インフラ」が必要となります。インフラは目に見える設備はもちろんですが、法規制も含めてインフラと捉えた方がいいでしょう。

そして、「モビリティサービス」と「インフラ」が充実することで、町全体がスマート化された「スマートシティ」が実現します。

MaaSは3領域に分かれる
スマートシティ

各種資料を基にステラアソシエ作成

MaaSと一言で言っても、関係する領域は多岐にわたります。また、各サービスや実証実験の関係性が分からないことも出てくるはずです。

しかし、先に挙げた3つの領域と関係性を理解することで、MaaS関連の情報に触れた時に「これはモビリティ単体だからモビリティサービスだな」とか、「市全体に対するサービスだから、スマートシティだな」という、頭の整理ができるようになります。

MaaSは大きな概念ですので、まずは森を理解してから、木々を見ることをお勧めします。

次に木に入る前に、木々の集まり、林を見ていきましょう。

MaaSの3領域をブレイクダウンすると以下のような項目が存在します。(各章項目を深掘ると長くなってしまうので、第2回以降で解説します)

 MaaSの小分類
MaaSの小分類

各種資料を基にステラアソシエ作成
 


2.モビリティサービス

モビリティサービスは、車によって提供されるサービス全般です。

自動車産業がサービス業に変化することで生まれるサービスを指します。また、配送の自動化も挙げられます。

人の移動と車の移動
各種資料を基にステラアソシエ作成

現在は、Uberに代表されるタクシーアプリや、自転車のシェアリングサービス(バイクシェア)が広がっています。それが自動運転の発達により、より幅広いサービスが増えていきます。

物流に関しても、再配達の受け取り問題や、人員不足、EC発達による配送頻度の増加で物流企業は困窮しています。

現在、無人配送の実証実験が陸(自動運転車、配送無人ロボット)・空(ドローン)で行われており、人手を介さない配送技術が検証されています。ドローンに関しては、法規制が普及のハードルとなっています。

3.インフラ

MaaSのインフラでは、EV・自動運転車を普及させるために、EVステーション等の設備設置や、マーケティングとの掛け合わせが必要です。

EVのキーアイテムである急速充電器は、導入費用とランニングコストが高額で導入してもペイしないと言われています。導入した事業者が、充電ステーションをフックに本業で儲かる仕組みを作るなどが必要です。

EVと自動運転
各種資料を基にステラアソシエ作成

モビリティサービスのところで、法規制がネックとありますが、車そのものや、モビリティサービスが普及するにあたっては様々なハードルがあります。

車そのものというのは、「超小型モビリティ」と言われる1~2人乗りの車のことです。

2019年時点で日本で一番売れている超小型モビリティ「コムス」(トヨタ製)
コムス

4人乗りの乗用車よりもスペースを使わずに駐車や運転ができるので、過疎地や観光地での利用が注目されています。

しかし、日本では超小型モビリティは公道を走る許可が降りていません。私有地や、各自治体が管轄する市の単位で許可を出している場合のみ、利用できることになっています。

ご存知の通り、自動運転車も公道を走らせてはいけません。こういった法律が改正されて行かないと、いくらカーメーカーやサービス事業者が普及を目指してもストップがかかってしまいます。

ハード面のインフラと、ソフト面のインフラ(法律)がセットになって始めて、モビリティサービスの本格的な普及が始まると考えられます。

4.スマートシティ

「モビリティサービス」と「インフラ」が整備された状態で実現するスマートシティ。現在の中心は移動手段の統合です。

統合とは、家から駅までや、駅から目的地までのラストワンマイルも含めて、バス・鉄道以外の移動手段を一つのアプリで検索・予約・決済できる仕組みです。

自転車やレンタカーなど、現在はそれぞれのアプリやウェブサイトで予約しないといけないものが、一つのアプリで完結できるようになります。

モビリティのエンドユーザ

しかし、単に移動手段が統合されるだけではユーザー体験が向上しませんので、「移動+α」の付加価値を提供することが必要です。

また、自動運転の普及のために町の在り方が変わるとも言われています。自動運転を前提にすると、今の都市計画とマッチしない部分が多いため、リデザインする必要があります。

今回はMaaSの全体像についてご紹介しましたが、次回はその1つである「モビリティサービス」について解説します。

出典一覧:
ジョブール

【トヨタ車体 コムス 発売】実質価格59万8000円から

カリフォルニア200 EV 充電ステーション

グーグルの自動運転車 バスと接触


保木社長保木 佑介
RPAホールディングスにて、総合化学メーカーや総合電機メーカーの研究開発部長を中心に、100以上の新規事業プロジェクトに従事。RPAホールディングスがマザーズ上場したことを機に、2018年5月当社を設立。得意領域は、MaaS、化学、社会インフラIoT、サイバーセキュリティ。趣味は猫を愛でること、文章を書くこと、フットサル。
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