オープンイノベーションで中小企業にしかできない商品開発を!世界初「立って寝る」仮眠ボックス

オープンイノベーションで中小企業にしかできない商品開発を!世界初「立って寝る」仮眠ボックス

合板卸売業を主軸として合板の加工・製作や什器の設計も行う広葉樹合板株式会社。

同社は「立って寝る」という斬新なコンセプトのジラフナップを提供している。

今回はどんなきっかけで今までにない商品が生み出されたのか、世界初調査によってどんな広告効果を期待したのかを伺った。

【写真左から】
ステラアソシエ株式会社 代表取締役社長 保木佑介
広葉樹合板株式会社 代表取締役 山口 裕也様

目次

「立って寝る」商品の開発背景

ー まずはじめに、貴社の事業について簡単にお伺いさせてください。

山口 合板や化粧板の卸、化粧合板を使った店舗関係の什器の製造を行っています。

創業してしばらくは卸業中心でしたが、それだけではなく事業の幅を広げようと考えて商品開発をするようになりました。

今回開発したジラフナップもその一つです。使う材料や技術は既に持っていたのでチャレンジしました。

ジラフナップは、立ったままの姿勢で容易に仮眠が採れる仮眠ボックスです。「giraffenap」の名前の由来は、キリンが立ったまま短時間睡眠をとる“ジラフ”からきています。

世界では仮眠を積極的にとることで生産性に良い影響を与えることが、アメリカのNASAなどが行った多くの研究によって示されています。これからは積極的に眠気を受け入れながらジラフナップで仮眠をとっていただくことにより、今まで以上に効率的で充実したパフォーマンスを維持していただくことが可能です。

2023年12月からは蔦屋様よりお話をいただき、来店者数一日平均20,000~25,000人と言われるここ二子玉川にある蔦屋家電に展示することが決まりました。

ーどういった経緯でジラフナップが生まれたんでしょうか。

山口 2021年に「知財ビジネスマッチング」イベントにおいて株式会社イトーキ様と出会い、「仮眠ボックス」のライセンス説明を受け、世界初のユニークな商品開発をしてみたいという強い思いが私の中にこみ上げました。

翌年のライセンス契約の数日後、報道を見た北海道大学の石橋教授よりコロナ渦を鑑みて「高清浄環境システム」という、ボックス内の二酸化炭素がガス交換膜を通して酸素に入れ替え、塵粒子を急速に減少させる特許をご提案いただきました。

また、石橋教授からご紹介いただいた台湾国立成功大学のSheng-Fu Liang教授からも、立って寝た場合の睡眠評価に興味を持っていただくことになります。

そのことがきっかけとなり、広葉樹合板・北大・NCKUによる3機関での共同研究が開始しました。結果、許容可能なガス分子濃度制御性により短時間でのクリーンルーム環境をつくることが実現され、同時に被験者が比較的長時間、最適な仮眠にふさわしい睡眠環境を実現しました。

ー国境を超えた壮大な研究開発ですね。商品が完成するまでの苦労はどういったものがありましたか。

山口 快適と安全の二つにフォーカスしてゼロからの開発は膨大な選択肢の中から、一つ一つ吟味し試行錯誤を繰り返し、まさに手探りの状態でした。

構造体の選定・体を支持する支点とそのポディショニング・耐震試験のエビデンス・消防法・海外を含めた関連の保護を強化して市場優位性を高めるための知的財産権・もちろん睡眠のエビデンスなどなど数え上げたらきりがないほど多くの壁を乗り越えることができたのは、より効率的で充実したパフォーマンスを維持するため、積極的に眠気を受け入れて仮眠をとることで、疲労やストレスから解放され、リフレッシュしたクリアな頭で集中して仕事や作業に取り組むことができる、これまでにない画期的で革新的な商品を作りたいという思いでした。

人の目を引き付ける魅力あるものでなければいけないという思いから外観のデザインにもこだわりました。

近未来をイメージした「スペーシア」に取り入れた12面体のユニークなデザインはミッドセンチュリー時代のバックミンスター・フラーのジオデジック・ドームの形がベースとなっております。また国産材をふんだんに利用した「フォレスト」には京都の町家や日本庭園を思わせる和の空間に調和する風格を備えた格子状のデザインを採用しました。

ー単にコンセプトが面白い商品で終わらないように快適性を追求しつつ、デザイン性にもこだわったということですね。

山口 そうですね。その甲斐あってか、未だこれから開発を始める段階の2022年ライセンス契約発表後まもなく一通のメールがネスレ日本株式会社様から届きます。内容は「ネスカフェ睡眠カフェ」とのコラボレーション依頼でした。

カフェイン入りのコーヒーは摂取してから30分程度で体内に吸収され始めると言われているため、コーヒーを飲んだ後15~20分程度の短い仮眠をとって目が覚めるとほぼ同時にカフェインでシャキッとし、その後のパフォーマンスに役立つといわれています。このことを「コーヒーナップ」と言います。

この「コーヒーナップ」と立ったまま寝る「ジラフナップ」のコラボを2023年8月より原宿にあるネスカフェ仮眠カフェで企画するという内容でした。

製品もできていないこれから開発する段階ではありましたが前向きな返信をさせていただきました。今思えばこのことも一年間で製品化するという原動力の一つとなっていたと思います。

そして去る2023年8月22日にネスカフェ原宿に「スペーシア」「フォレスト」計4台設置をして無事開催に至りました。初日はマスコミ限定ということで弊社の常務が対応しましたが大勢のメディアが詰めかけていたとの報告を受けています。

国内海外のTV、ラジオ局、webニュース各局、新聞社、雑誌社など多くのメディアでご紹介いただきました。

マスメディアから求められた「世界初の根拠」

ーステラアソシエに依頼頂いた段階では既にリリースされていたと思います。どちらかというと商品の発売前に調査させていただくことが多いのですが、今回はなぜリリース後でメディアからの反響も多い状態で相談いただけたのでしょうか。

山口 我々も世界初の商品だと思って開発していたので、そこに疑いはありませんでした。

そんな中テレビで取り上げていただく機会があり、放送局に世界初を謡いたいと申し出たところ、広告審査協会から「世界初の根拠はありますか?根拠が無いなら世界初表記を使うことは難しい」と言われました。

この時初めて、世界初の根拠と呼べるものは無いことに気づき第三者による調査が必要だと思いました。

ーマスメディアに取り上げてもらう際に根拠が必要だったということですね。
調査会社は何社か候補があったんでしょうか。

山口 ありましたが、ステラアソシエさんのHPにて導入事例を見た際に、実績が豊富だという印象を受けて選ばせてもらいました。

他にも世界初調査やNo.1調査をする調査会社はありますが、製造業を中心とした新規事業コンサルティングが主事業ということで技術に強いのではないかという考えもありました。

問い合わせした後に打合せで紹介してもらった事例では大企業だけではなく中小企業の事例もあり、依頼ができると判断しました。

保木 実はジラフナップはメディア露出もしていたので問い合わせをもらう前から認知していました。

初めて知った時も「立って寝るという商品は見たことないな」と思ったのですが、改めて案件として考えると調査設計の難しさがありました。

ーどういった難しさがあったのでしょうか。

保木 世界初調査、及びNo.1調査全般に言えることですが商品は2つに分かれます。

1つは競合多数で調べる対象が多いもの。もう1つは競合と呼べるものが少なく調査対象の定義が難しいものです。ジラフナップは後者です。

コンセプトが斬新なので競合が少ないことは良いことなのですが、その唯一性を証明するにあたってどんな方法で何を調べればいいのか。ここはNo.1調査に熟練している調査会社の知恵が役に立つところだと思います。

ー調査の進め方やレポートの印象はいかがでしたでしょうか。

山口 契約前に調査の定義や調査方法の提案をもらったので契約後に感じたギャップのようなものはありません。

レポートについても同じコンセプトの商品はないという結果でしたが、その中でも類似商品については画像とともに何が異なるかの説明も添えられていたので不安感は無かったです。

保木 ありがとうございます。

ーありがとうございます。

山口 今回は似たような商品が無いと想定されたので何を競合として見るべきか考える必要がありました。
また通常は商品化前に調査するのでクライアントの商品は出てこないですが、既にジラフナップは商品化されており国内外のメディアで紹介されていたのでジラフナップが調査の中に入らないように調べる必要がありました。

ー最後に今後の展開を教えてください。

山口 開発当初はオフィスでの利用を考えていましたが、私たちが考えている以上に睡眠に困る場所があり活用いただける用途があると驚いています。

すでに財閥系商社様などからご予約をいただいておりますが、全国の医療現場や交通系機関、大手遊技場会社様や、大手電子機器メーカー様が開発した仮眠起床AIシステム搭載のご案内など、また海外からは中東のエアラインや香港の空間コンセプトデザイン会社様からアプローチをいただいています。

また、保管・デリバリー・設置については大手倉庫運送業者様に依頼する流れで進んでおります。商品のご提供方法として販売とリースの2本立てで考えており、それらの商品提供管理システムを構築して2024年1月より商品の提供を開始いたします。

ー今回の成功事例をもとに、今後もオープンイノベーションに積極的に取り組んでいくのでしょうか。

山口 そうですね。大企業様に眠っている技術を商品化するのはある意味サステイナブルだと考えています。なのでそのような機会があればチャレンジしたいですし、弊社に限らず知財を有効活用する仕組みが広がればいいなと思っています。

ー本日はありがとうございました。

インタビュー後、体験をさせていただきました。

山口 まず台に立ち、下半身を後ろに倒して安定させます。
おしりを乗せる高さは調節できます。

山口 次に頭を乗せる台の調節です。ここも高さを調節できるので自分の身長に合わせることができます。

保木 縦に伸びているバーが調節する受けになってるんですね。

山口 そうですね。眠っていただくために安定感が必要だったので強度を大切にしました。試されますか?

保木 ぜひお願いします。高さを合わせると下半身がしっかりホールドされますね。

山口 頭を乗せる部分も簡単に調節できます。

(5分ほど休ませてもらいました)

保木 初めてだったので不思議な感覚ですが体が休まったように感じます。デスクで寝るよりも体が痛くないですね。

山口 ありがとうございます。日本人は睡眠不足の人が多いのでジラフナップを使っていただいて世の中のビジネスパーソンの生産性向上に繋がることを期待しています。

業界経験豊富なコンサルタントが貴社をサポート

保木 佑介

大学時代、ヤフーグループにて求人サービスの立ち上げに関わりサービスリリースから運用までを経験。RPAホールディングス(現オープングループ【6572】)に入社後、大手製造業が保有するR&D技術の出口探索を中心に100以上の新規事業プロジェクトに従事(主な担当業界は化学とSIer)。2018年3月、RPAホールディングスのマザーズ上場を機として同5月にステラアソシエを創業。2020年、No.1を証明する「ファーストテックサーチ」をリリースし、テレビCM等の根拠データとして利用される。その後、No.1調査の有識者としてNHK「クローズアップ現代」に出演。

経験豊富なコンサルタントが戦略立案から施策実行まで伴走します

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