VAIO世界初調査事例 第二弾

【世界初調査事例】VAIOがディスプレイ市場に参入 世界初調査で再びステラアソシエを選んだ理由

2014年にソニーから独立し、唯一無二の商品開発を行っているVAIO。

PC市場がコモディティ化する中で、2021年には「世界初の立体成型フルカーボンボディのノートPC」であるVAIO Z を発売するなど他にはない特長をもった商品を提供している。(「世界初の立体成型フルカーボンボディ」を実現したVAIOの挑戦。ステラアソシエによる世界初調査の裏側と成果に迫る

今回は設立10年の節目に、PC事業の周辺分野としてVAIOとして初めてのモバイルディスプレイ「VAIO Vision+」を開発。他にはない価値を追求し、世界初のモバイルディスプレイが誕生した。

PC同様に競合が多く存在するモバイルディスプレイ市場になぜ参入したのか、開発秘話と世界初調査を実施した経緯について話を伺う。

【写真左から】
ステラアソシエ株式会社 代表 保木 佑介
VAIO株式会社 開発本部 プロダクトセンター シニアUXマネージャー 鈴木 陽輔 様

目次

世界最軽量の誕生秘話

― まずはじめに、鈴木様の業務内容や役割について教えてください。

鈴木 開発本部 プロダクトセンターにて商品企画を担当しています。具体的にはPC及びその周辺のUXにかかわるソリューションや製品の開発に携わっています。

昨今のテーマとしてコロナ以降、企業ではweb会議が中心になり、オンラインでのコミュニケーションの質を上げることが求められていると考えています。

そのニーズに対し、解決できる商品企画を行うのが私の仕事です。

VAIO株式会社 鈴木様

― なぜ、VAIOがモバイルディスプレイを作ることになったのでしょうか。

鈴木 中核事業はPC事業ですが、その体験をさらに拡張するためにPC以外のテーマについても企画を行っています。

まずは作業領域の拡張に取り組もうと考え、モバイルディスプレイを開発しました。

モバイルディスプレイやアクセサリ事業を立ち上げるために開発したわけではなく、あくまでコンピューティング体験をより良くするために、いつでもどこでも使える拡張ディスプレイを選びました。

仕様、スペックから決めるのではなく使い心地や体験ありきで商品企画しています。

― 軽量化に注目したのはどういう理由でしょうか。

鈴木 私自身、リモートワークが始まり自宅に大きいディスプレイを買い、ノートPCの上部に設置し上下二画面で仕事をしてみるとその便利さを実感しました。

単に画面が広くなるのではなく、姿勢も良くなることにも気づきました。

上下二画面になるとメイン画面が下部のノートPCではなく、上部のディスプレイ側になります。目線が高くなるので姿勢が良くなるのです。

別のシーンでは、カフェで作業している人を観察しているとPCを机より高く持ち上げて画面を見ている人が一定数いることに気づきました。

恐らく、下を向くよりも見やすく、肩腰に負担にならないから自然にその動作をしているのだと思います。

― まさにUX、体験から考えるということですね。

鈴木 そうですね。最近ではリモートからオフィスに出社して元の働き方に戻る傾向にありますが、リモート併用なのでオフィスが狭くなっていてディスプレイが置ける場所がなかったり、サテライトオフィスに行く日もあるなど働き方は多様化しています。

そこで、リモートワークで経験した拡張ディスプレイがどこにいても使いたいと思い市場を見てみました。モバイルディスプレイの多くは15~16インチなのですが、重さは1㎏ぐらいとモバイルといいながら重いなというのが率直な印象です。

ここに着目し、モビリティが得意なVAIOだからこそ提供できるモバイルディスプレイがあるのではと思い至りました。

気軽に持ち運んでもらえる本当のモバイルディスプレイ。そのためには十分に軽いことが必要です。更には、もし持ち運んだ先で使わなかったとしても、「わざわざ持ち運んだのに」と損をした気分にならないほど軽量なことも必要だと。

そしてディスプレイを広げるうえで横に置くと目線が横になるので、これではあまり拡張ディスプレイの良さが活かせない。上下二画面で使えるディスプレイにしようと。

その結果として、上下二画面で使える世界最軽量* のモバイルディスプレイ「VAIO Vision+」が誕生しました。

VAIO Vision+をノートPCの上に設置した状態。持ち運び用のカバーが設置時の支えになる

* 325gのモバイルディスプレイ。14インチ以上のモバイルディスプレイとしては世界最軽量

保木 今日初めて実物を見て触らせてもらいましたが、液晶のサイズは普通のノートPCと同じぐらいの大きさなのに薄く軽かったです。いい意味でサイズと持った時の重さがマッチしてない驚きがありました。

鈴木 ありがとうございます。

ちなみに14インチというのもなんとなく決めたわけではなく、ノートPCの主流サイズが13~14インチなので同じ大きさがいいだろうということで14インチにしました。

またこのサイズを従来の横置きで使用すると机が狭い場所では使えません。ホテルやカフェなど小さい机でも上下二画面は有効活用できます。

数字で伝わらない価値を届ける手段が世界初調査だった

― なぜ、世界最軽量を題してマーケティングを行おうとしたのでしょうか。

鈴木 自分達でネットで調べる限りは世界最軽量である可能性が高いと思っていました。

しかし、数字を見てもらうだけでは軽さは伝わりません。

そのため1つのワードで軽さを伝えたかったのですが、「世界最軽量」が一番分かりやすいと考えました。

どのくらい軽いのか、なにと比べてなどもありますが、一つのワードで絶対的に軽いことを示したかった。

また、将来的にグローバルに展開する可能性も考えると、「国内メーカーの中で最軽量」といった制限は設けず、グローバルに言える「世界最軽量」が有効だと考えました。

― 自社でも調査を行っていたということですが、自社調べにしなかったのはどういった理由でしょうか。

モバイルディスプレイはここ数年で急速にその製品数がグローバルに増えており、メーカー数だけでも膨大であったことから自社調べと言っても難易度が高いと考え、調査をお願いしようと思いました。

― 自社調べでは難しかったということですね。ステラアソシエとは2回目のお取組みになります。なぜ、他の調査会社ではなく今回もステラアソシエを選んだのでしょうか。

鈴木 ステラアソシエさんとは、以前もVAIO Zの世界初調査を行っていただいてました。(「世界初の立体成型フルカーボンボディ」を実現したVAIOの挑戦。ステラアソシエによる世界初調査の裏側と成果に迫る

その時の担当がいまも同部署におり、実は私も当時の調査を依頼する際に横で見ていたのですが難しい調査になると思っていました。

立体成型フルカーボンボディは今回の軽さとは異なり数値で表現されるものではないので、PCメーカーのスペックを見てもすぐに判別がつきません。

しかしステラアソシエさんは大企業向けの新規事業コンサルティングを普段やられていて製造業、技術コンサルティングに強いということもあり商材理解をしっかりしていただけました。

難しい課題に共に取り組んでいただいたこと、商品の本質を見抜いたうえで、調査をしていただいたことをお聞きしており、今回もステラアソシエさんに声をかけさせていただきました。

今回の製品においても、案件のご相談を始めた段階ではあまり情報が整理できていない状態でしたが、軽さだけでなく、持ち運びしやすさや上下2画面設置できるカバースタンドなどすぐに製品の本質を見抜かれていたことには驚きました。

保木 正直、前回のVAIO Zの調査は弊社でお受けしたNo.1調査の中では難しかったです。

しかし、新規事業コンサルティングの際はもっと難解な要素技術や化学分野のテーマに携わらせていただいているので、コンシューマー製品の特徴、本質を捉えること自体は問題ありませんでした。

その特徴をどうやって調査で判定していくか、何を見ればいち商品の成型方法が判定できるかということに力を注いだプロジェクトでした。

今回の質量を調査するということについても、商品ページやカタログを見て判断すること自体は容易ですがどこまで調査するのかがポイントです。

世界で流通するPC全てをリストアップすることは不可能に近いですし、「世界最軽量」を謳うことが目的であればその必要性もありません。

何をどこまで調査する必要があるか、たしかに要件定義をすることが調査会社だからこそお役に立てる部分だと考えています。

ステラアソシエ株式会社 保木

― 結果として世界最軽量となりました。率直な感想をお聞かせください。

鈴木 世界初となり良かったです。ただ、単に数字や軽さだけを追い求めたのではありません。

上下二画面で使えることや、素材に熱可塑性カーボン(CFRTP)を使用することで耐衝撃性と薄型化を図りました。持ち運びやすさと実用性の両立ができ満足しています。

― 既に販売がされていますが、反響はいかがでしょうか。

鈴木 多くのWebメディアの記事では見出しとして「世界最軽量」が使われ、直ぐにその軽さがお客様に伝わりました。これは狙い通りです。

また製品発表した際にはSNSで普段PCの新製品を発表する時以上に、たくさんの方から好意的な反応が得られており、製品の魅力がより多くの方の目に留まったことは収穫でした。

― 最後に今後の展望を教えてください。

鈴木 今回はVAIOとして2回目の世界初となる商品ですが、今後もユニークな商品を提供していきたいです。

働き方が多様化する中で、求められるコンピューティング体験を作っていきます。

業界経験豊富なコンサルタントが貴社をサポート

保木 佑介

大学時代、ヤフーグループにて求人サービスの立ち上げに関わりサービスリリースから運用までを経験。RPAホールディングス(現オープングループ【6572】)に入社後、大手製造業が保有するR&D技術の出口探索を中心に100以上の新規事業プロジェクトに従事(主な担当業界は化学とSIer)。2018年3月、RPAホールディングスのマザーズ上場を機として同5月にステラアソシエを創業。2020年、No.1を証明する「ファーストテックサーチ」をリリースし、テレビCM等の根拠データとして利用される。その後、No.1調査の有識者としてNHK「クローズアップ現代」に出演。

経験豊富なコンサルタントが戦略立案から施策実行まで伴走します

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