クローズアップ現代にて、No.1調査をテーマに放送がされました。
ご視聴いただいた方、ありがとうございます。
NHKさんによるとこれをNo.1調査をテーマにしたテレビ番組は過去になかったそうです。私も見たことがないので初めて取り上げてもらったのだと思います。
(Twitterでは広告主がいないNHKだからこそ放送できたという意見がありましたが、その可能性もありますね。広告主がいる民放のテレビ局が一部でも広告主を批判するような内容は取り上げにくいからです)
この記事では番組を視聴されて、もっとNo.1調査について勉強したい、番組の内容を頭の中で整理したいと思われた方向けに書きました。
会社の紹介
簡単に会社と私の紹介をさせていただきます。
弊社ステラアソシエでは、主に大企業向けの新規事業コンサルティングを提供していますが、関連してNo.1調査のファーストテックサーチを提供しています。
No.1調査には大きく2つの種類があります。
クローズアップ現代で取り上げたのは分類の上段に記載しているNo.1表記にあたります。「お客様満足度No.1」「モデルが選ぶ美容エステNo.1」とかですね。
一方、弊社が主に携わっているのは下段の元祖表記に当たります。「業界初」「日本初」「世界初」といったある範囲で初めての商品ということを調査して証明しています。
詳しくは後述しますが、問題が起きているのは前者のNo.1表記になります。
何が問題か
番組でも紹介されていましたが、端的に言うとNo.1は作ることができてしまいます。
調査の方法をこねくり回せばNo.1をとることができるからです。
この問題が起きている原因として、調査会社と広告主の両社の立場に分けてご紹介します。
No.1調査を行う調査会社の問題
問題がある調査を行う事例はたくさんあるので、3つ紹介します。
1つは「サイトイメージ調査」です。基本的にNo.1などの表記をした場合、注釈に調査内容が簡単に記載されます。これについてはどんな企業でも行っています。
そこに「サイトイメージ調査による」と書かれている場合、No.1の信ぴょう性は極めて低いと考えてよいです。
サイトイメージ調査とは、「ウェブサイトをみていいと思ったかどうかを回答してもらう調査」です。
おかしいと思いませんか?
そのアンケートの回答者は商品を一切利用せずに、ウェブサイトを見た感想だけでいいかどうかを判断しています。
つまりウェブサイトが綺麗であればいい回答がもらえてしまいます。
でも、商品を利用するかどうか検討している消費者の方は、ウェブサイトを見ただけで「いい商品です」といっている情報源をもとに判断したいでしょうか。
そんなもの何の参考にもならないですよね。使っても無い人のレビューはレビューとは呼びません。
しかし、No.1と記載された広告を見ていると、サイトイメージ調査は驚くほど多く存在します。
2つ目はサイトイメージ調査と似ていますが、商品を利用していない人を対象にしたアンケートなどの調査です。
クローズアップ現代でも、商品を利用していない人を対象に調査をした結果、14冠を取得したという歯磨き粉が紹介されました。
しかも、項目の中に「信頼性No.1」がありましたが、利用していないのに信頼性があるかどうか判断できませんよね。
こういっためちゃくちゃなアンケートがあるのが実情です。
3つ目は質問操作です。
商品アンケートの質問操作をすれば、取得したい回答を得ることができます。
私が見たあるお菓子に関するアンケートだと、新商品に関するアピールが100文字ほど書かれた後に「食べてみたい」「興味がある」「食べたくない」の3択が置かれているものがありました。
ポジティブな回答が2つに対し、ネガティブな回答が1つです。(商品紹介だけではなく、誰でも知っている有名お菓子メーカーの商品であることもかいてあります)
割合もおかしいのに加え、商品のアピールではおいしそうな文言が並んでいます。
それを読んだうえで、「食べたくない」という強い否定回答を選ぶ人は少ないはずです。しかも有名なお菓子メーカーの名前も出ているので、その企業の新商品というだけで上2つを選ばないでしょうか。
このようにポジティブな回答を得ようとすればいくらでも誘導をすることができます。
No.1調査の広告主の問題
ステラアソシエにこういった問い合わせをもらうことがあります。
「競合を4社調べてNo.1を謳うならいくらですか?」「成果報酬はやってますか?」
前者は恣意的な調査であり、後者はでっち上げ調査を要求しているものです。
前者は明らかに競合商品が100はあるであろう領域だったのですが、4社だけ調べたらいくらかという質問をもらいました。
No.1を謳うからには競合を一通り調べる必要があるのですが、費用を抑えたいからかサンプル数の大幅な削減を要求されました。
こういった恣意的な調査は当然認められるものではなく、お断りしています。
後者は、一部の調査会社が成果報酬を謳っているので質問をいただいているのだと思いますが、前提としてNo.1調査を行う調査会社は70点の商品を100点(No.1)としてお墨付きを出すことではありません。
100点の商品を100点であると証明することが仕事のはずです。
商品の満足度を上げるのは誰でしょうか?調査会社ではありませんよね。
それは商品を開発し、販売する依頼元の企業様の仕事です。
本当にお客様満足度がNo.1ならNo.1を謳ってもいいですが、調査をした結果がNo.2以下ならその結果をクライアントに提出するのが妥当です。
当然No.1は謡えないわけですが、商品がNo.1でない責任を調査会社が持つのはおかしいと考えています。
それにもかかわらず、成果報酬(No.1が取得できなかったら全額返金)で営業をしている調査会社が存在します。
それを真に受けて、成果報酬じゃないとおかしいという認識を持ってしまう広告主がいます。
No.1は作ろうとすれば作れるので、成果報酬というのはおかしいわけです。
成果報酬と言ってながら、確実にNo.1をとるというのが実情です。
フェアな調査を行う企業で成果報酬はあり得ません。調査会社は調査を行う会社だからです。
仮に結果がNo.2以下だった場合、調査に意味はなかったのでしょうか。
それは違うと思います。
なぜなら、調査を行わずにNo.1を表記してしまった場合のリスクを抑えられたからです。
No.1とは呼べないのにNo.1広告を出すと、競合企業からの訴訟リスクや、消費者から「この商品の広告はおかしい」とブランド価値を下げてしまいます。
本来はそのリスクを下げることも含めて調査を行うはずです。
そのため、結果がどちらになったとしても成果報酬にすることはおかしいということになります。
調査会社にNo.1調査を依頼する際の正しい見分け方
No.1を取得したいと思ったときに自社調べでは心もとない場合は、調査会社に依頼することになります。
前述してきたような問題がある調査をしない会社の見分け方は2つです。
恣意的な調査手法を用いていない
恣意的な調査手法は前の章で紹介しましたが、以下です。
- サイトイメージ調査
- 自社商品を利用していないパネラーにアンケートを取る調査
これらを調査方法として行っている場合は信頼性に欠きます。
確認のやり方ですが、「調査会社名 調べ」と検索すると過去にその調査会社が行った事例が出てくるはずです。
そこでどんな調査方法をとっていたのか、注釈を確認しましょう。
成果報酬を謳っていない
広告主の問題で紹介しましたが、成果報酬を謳っているということは結果ありきの調査をするということになります。
プロにお金を払ってまで公平性に欠ける調査をされてしまうので、それならまだ自社調べを行ったほうがマシかと思います。
さいごに
これだけ企業が悪知恵を働かせて広告を作ってしまうと、いい商品を見分けるのが大変ですよね。
私自身ステラアソシエではNo.1調査を提供していますが、プライベートになれば一人の消費者です。
消費者目線でも怪しい広告が増えるといい商品にたどり着く手間がかかってしまう、場合によっては粗悪な商品を購入してしまうことになるので、それを防ぐ一助になれたらと思いながら企業活動をしています。
今回のクローズアップ現代はきっかけにしか過ぎませんが、少しでもよい商品が世に出てくるよう企業としても消費者としても厳しい目を向けながら消費活動を行っていくことが現状を変えることに繋がると思います。
記事を読んでいただきありがとうございました。