株式会社PMKメディカルラボに対する景品表示法に基づく措置命令が、2022年6月15日に発表されました。ニュースでも大きく取り上げられ、ご覧になった方も多いかと思います。
本件について、No.1調査を数年提供しているNo1調査.com(運営ステラアソシエ)が解説します。
また、本記事を作成するにあたり、措置命令を出した消費者庁に電話確認を行っています。それを通じて分かってきた問題点と、No.1広告の利用を検討されている企業様がどんなことに気を付けてNo.1広告を利用すべきか紹介します。
景品表示法についてどんな措置命令がされたか
PMKは有名エステサロンで、ご存じの方も多いはず。皆さんが把握されているのは「エステサロンが虚偽のNo.1を掲載していた」というざっくりした情報だと思いますので、措置命令の内容を確認していきます。
まず、PMKが掲載していた広告が以下です。
こちらに対して出された措置命令の本文の抜粋が以下です。
「あの楽天リサーチで2冠達成★バスト豊胸&痩身部門で第1 位!」、「バストアップ第1位 施術満足度」、「ボディ瘦身第1位 施術満足度」等と別表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、
(中略)
本件2役務に係る楽天インサイトが実施した調査は、PMKメディカルラボ が提供する本件2役務及び他の事業者が提供する本件2役務と同種又は類似 の役務を利用した者に対する調査ではなく、また、当該調査においてPMKメディカルラボが提供する本件2役務に係る施術満足度の順位は第1位ではなかった。
出典:消費者庁「株式会社PMKメディカルラボに対する景品表示法に基づく措置命令について」より
指摘されている問題は1つです。役務(エステのサービス)を提供した人に対して行った調査ではなく、利用してない人も対象にして行っていたことが指摘されています。
措置命令の本文には記載が無いですが、報道では調査対象者はPMKを利用してない女性というわけでもなく、男性が調査に含まれていたとされています。当該施術は女性を対象にしているはずが、施術を利用しえない男性を調査対象にしていたということです。男性が豊胸施術を受けることは無いのに、調査対象に入れていることがおかしいというわけですね。
また、本文にはありませんが、「初回の調査では2位の結果だったが、調査対象者を恣意的に抽出して1位の結果に改ざんした」ということも報道されています。措置命令と合わせるとこの2点が問題ということになります。
景品表示法の措置命令に関する4つの疑問
上記だけを聞くと、一般の方は「それはおかしいよね。ちゃんと調査してほしい」と完結すると思いますが、弊社はこの措置命令について大きな疑問を持ちました。具体的には4つあります。
①この手の悪質な調査手法は常習化しているが、なぜPMK社がやり玉に挙がったか
驚くかもしれませんが、「利用したことがない人を対象にした満足度調査」はたくさんあります。
はっきり言うと、満足度調査の過半数以上は利用してない人を対象に調査しています。
そのことを知っている立場からすると、「なぜ今更、利用してない人を対象にした調査に対して消費者庁は措置命令を出したんだろう?」という疑問が生まれます。
PMK社が出した広告はよくありませんでしたが、別にPMK社が初めてやったわけではないのです。大企業や中小企業を問わず同様の手法は繰り返されてきていますし、現在進行形でサービス利用者を対象にしていない調査によるNo.1表記がされている商品はあります。
そのため、なぜこのタイミングで措置命令がされたのか、なぜ他の企業ではなくPMK社だったのかという点が引っかかりました。
つまり、「今までもやっていいわけではなかったけど、消費者庁としては正直放置してました。ただし、今後は厳しく取り締まっていきます」という消費者庁としての警告の意味があるのかが知りたいポイントになります。
②初回調査で2位だったことがなぜ発覚したか
再度、掲載されていた画像をご覧ください。
ここに書いてある調査内容は、調査元である楽天リサーチと調査日、イメージ調査といった最低限の情報のみです。これはあえて詳細な調査方法を伏せたと考えられます。
それにも関わらず、報道では「初回は2位だった結果を1位に改ざんした」と言われています。このHPに書いてあること以上のことは読み取れないはずなのに、なぜブラックボックス化している調査プロセスが発覚したのでしょうか。
外部から知るすべはないので、内部通報だったのでしょうか。どういったきっかけでこの広告に対する消費者庁の調査がされたのでしょうか。
③発注者であるPMK社は本当に改ざんを知らなかったのか
本件に対して、PMK社は「改ざんしているとは知らず、結果を使っただけ」とコメントを発表しています。しかし、No.1調査を調査会社が納品する場合は、No.1になったかどうかだけではなく、その根拠となるローデータも提出します。
今回で言えば、どんな層の何名を対象にどんな質問をした結果、No.1になったかというローデータがあります。そこに、利用するはずがない男性が含まれているわけなので、PMK社が知らないというのはおかしい話です。
仮にPMK社が本当に知らなかったということなら、調査会社側が2位を1位に改ざんしたこと自体も隠したという可能性があります。つまり二重改ざんです。男性を対象にするという点で調査自体も改ざんし、発注者に対しての報告も改ざんしたということですね。
これがどっちなのか。PMK社は改ざんデータと知っておきながら広告に利用したのか、全て広告代理店の仕業だったのかが気になりました。
④広告代理店や調査会社に措置命令が無い理由は
今回の商流は、PMK社が広告代理店に依頼し、広告代理店から楽天リサーチなど調査会社に再委託されたと報道されています。胴元が広告代理店だとした場合、改ざんに関わったことは間違いありません。
しかし、消費者庁から措置命令を下されたのはPMK社のみです。データを改ざんしていたのであれば広告代理店や調査会社にも責任が発生しそうですが、なぜPMK社のみが問題視されたのでしょうか。データを改ざんしても広告主以外は問題が無いのでしょうか。
措置命令に関する消費者庁からの回答と考察
以上の4点について、6月17日に消費者庁に問い合わせを行い、回答をもらいました。
質問1:この手の悪質な調査手法は常習化しているが、なぜPMK社がやり玉に挙がったか
回答:同様の手口を使った広告を肯定するわけではなく、景品表示法に基づいて措置命令を行った。満足度調査はサービスを利用した人を対象に調査をするべきだが、今回は利用していない人を対象に行っていたため措置命令を行った。
質問2:初回調査で2位だったことがなぜ発覚したか
回答:消費者庁が調査を進めるうえで判明したが、詳細について回答は控える。
質問3:発注者であるPMK社は本当に改ざんを知らなかったのか
回答:PMK社の見解のため、回答は控える。
質問4:広告代理店や調査会社に措置命令が無い理由は
回答:本件は景品表示法に基づく措置命令だが、景品表示法はあくまで商品を提供する企業を取り締まる法律。広告主から発注を受けた調査会社を対象にした法律ではない。
回答がもらえたものともらえなかったものがありましたが、重要なポイントが2つ見えてきました。
1.今後サービス利用者以外を対象に満足度調査を行うと措置命令が下される
1つは先に述べた通り、サービス利用者を対象にしていない満足度調査はごまんとありますが、今後それらは景品表示法の措置命令を受ける可能性が十分にあるということです。
しかも、広告文の注釈を読むと利用者以外も対象にしていることが分かるパターンもありますが、PMK社の場合は注釈に調査対象者に関する情報は書いていません。
その条件下でも、消費者庁からの調査を受けて措置命令が下されました。つまり、注釈で読み取れる内容にしているかどうかに関わらず、消費者庁からの措置命令を受ける可能性があります。
これにより、半端な調査によるNo.1を掲載してしまうと、PMK社のようにブランドイメージを棄損することに繋がってしまいます。今まで以上に調査方法を精緻に行わないと、どんな企業でも措置命令の対象になりえます。
2.景品表示法で罰せられるのはあくまでも広告主
2つ目は、調査を委託したとしてもその結果を利用した広告主が罰せられるということです。
PMK社が「受け取った調査結果を利用しただけ」と発言しても、措置命令を受けるのはPMK社でした。PMK社側の指示があったのか、広告代理店や調査会社が主導したのかは分かりませんが、どちらにしても広告主の責任が問われるということです。
つまり、「No.1は簡単に取れますよ!」という説明を広告代理店や調査会社から受けて、その話に乗っかると痛い目に遭うということです。
調査方法が景品表示法に違反しない形で行わるのか、広告主も厳しい目で見ないといけません。
No.1調査は悪なのか
テレビでも「ユーザーがこの商品良いと言ってくれるのは価値があるが、自分たちでNo.1と謳うことに価値を感じない」と発言した経営者がいました。
No1調査.comとしてはNo.1調査、No.1広告自体が悪ではないと考えます。なぜなら、これを否定するということは「1番を取ることに意味が無い」ということと同義だからです。
小さいことなら学校で1番の成績を取る、徒競走で1番を取ることに意味はないのでしょうか。大きい枠組みなら、オリンピックで金メダルを取ることに意味はないのでしょうか。昔、某政治家が「2番じゃダメなんですか?」と発言したことが話題になりました。
どんな分野でも1番を謳うこと、誇ることに意味が無いとは思いません。むしろ、消費者目線で考えれば、1つの機会で体験できるものは1つのサービスに限られるわけなので、一番いいサービスを利用したいと思うのは当然の思考プロセスです。
もちろん予算との相談ではありますが、3番なら2番、2番なら1番のサービスを利用したいと思うのが普通でしょう。いずれの選択肢も予算内だとすれば、1番よりも5番がいいという人はいませんよね。
1番であることを企業から発信することで、消費者の方が見つけられるという流れが作れるなら悪いものであるわけがありません。
問題なのは1番が曖昧だったり、そもそも意味をなさない調査による1番を表記してしまうという調査プロセスにあります。今回の措置命令をきっかけに、満足度調査をはじめとしたNo.1調査が消費者庁から厳しい目で見られるのは間違いありません。
これからNo.1調査を依頼されようと考えている企業様は、無理なNo.1を掲載することでブランドイメージを下げるという本末転倒にならないよう、委託先に任せるだけではなく調査が公正かチェックして利用してもらえたらと思います。
No.1調査のご依頼を検討されている方はこちらからお問い合わせください。
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